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【働き方改革法】5日間の有給休暇取得義務化で本当に働きやすくなるの?

世間で騒がれている働き方改革法。

「正直、自分に何がどう関わってくるのかイマイチよくわからない!」
そんな方も少なくはないでしょう。法律用語や独特な言い回しのせいで、まるで外国語のように感じる方もいらっしゃるのではないでしょうか。

しかし、この先も会社勤めをしていこうと考えているなら、知っておいた方が良いです。知らないと利用されるだけになってしまう危険性さえあります。

そこで、皆様に関係のある部分を中心に取り上げていきたいと思います。

5日間の有給休暇取得義務化とは?

厚生労働省の公表している概要には、「使用者は、10日以上の年次有給休暇が付与される労働者に対し、5日について、毎年、時季を指定して与えなければならないこととする」とあります。

簡単にいうと、「会社は有給休暇が10日以上ある労働者に対して、毎年5日の有給休暇取得をさせなければいけない」「しかも、その取得日は会社が指定して良い」という内容です。

単純に考えて、休みが増えるということは喜ばしいことですよね。
今まで、何だか有給休暇が取りにくかった方にとってはまさに朗報と言えるでしょう。

但し、細かく見ていくと、不利益に感じてしまうケースもあります。

不利益に感じてしまうケース①:思い通りの有給休暇取得が出来なくなる

「今まで有給休暇を年5日以上取得している方には関係ない。」そう考えていませんか?
労働者毎に個別で設定する企業であればその通りです。その場合、そもそも会社が時季を指定する必要がありませんからね。

問題となるのは、企業が個別に設定せず、計画年休を設定する場合です。※この場合、従業員代表(従業員の過半数が加入する労働組合がある場合はその労働組合)との労使協定が必要となります。

例えば、有給休暇が10日ある人がいるとします。
今までは自由に10日取得していたのですが、今回の法改正に伴い、会社と従業員代表が労使協定により5日の指定日を決めた場合どうでしょうか?

10日の有給休暇のうち、自分の自由に取得出来る日が5日に減ってしまったという見方も出来ます。※今回はわかりやすくする為、年次有給休暇付与等細かいことは考えないこととしています。

結果、ケース①のような不利益と感じてしまう可能性があります。

 

不利益に感じてしまうケース②:思い通りの有給休暇取得が出来なくなる②

こちらのケースは、ブラック企業寄りの場合です。

今まで有給休暇が5日未満の取得(0も含む)しか出来ていなかった方がいるとします。今回の法改正に伴い、「休みが増える!」と喜んでいました。
会社からも有給休暇取得指定日についての意見を聞かれ、自分として休みたかった日を答えました。

しかし、実際に有給休暇取得指定日となったのは、自分にとっては繁忙期であり、休みたかった日は1日も指定日となっていませんでした。

「こんなことは絶対にありえない!」そう言い切れますか?

ここで、「時季を指定して」という文言が関係してきます。

有給休暇取得日を会社が指定して良いとは?

厚労省の概要では「時季を指定して与えなければならない」とされています。

つまり、会社が取得日を決めて良いよ!ってことなんです。もちろん、「労働者の意見を聴取し、その意見を尊重するよう努めなければならない」と定められています。

しかし、この「努めなければならない」という文言。これがかなり微妙です。
法律用語として、努力義務に分類されます。あくまで努力義務なんです。
つまり、罰則がない。極端な言い方すれば、意見は尊重しても、反映出来なくても良いんです。

結果、ケース②のようなことが起きてしまう可能性があります。

そもそも、有給休暇が5日取得出来ない状況の時点でブラック企業の可能性が高いとも言えますが…

不利益に感じてしまうケース③:年間休日と合わせると休みが増えていない

このケースは完全なブラック企業である可能性が高いです。

有給休暇取得はできるようになったのですが、その分年間休日が減っているというケースです。開いた口が塞がらないですよね。
そもそも、年間休日の減少を会社側が勝手に行った場合は不利益変更(違法行為)と取られても仕方ありません。
もちろん、従業員代表との労使協定をしっかり締結した上での年間休日変更であればその限りではありませんが…

どちらにしてもホワイト企業が行う手法とは思えないですよね。

まとめ

5日間の有給休暇取得義務化。

悪いことでは無いと思います。むしろ、今までの悪しき慣例を壊す為には良い取り組みだと思います。
しかし、私が考えただけでも上記のようなケースが考えられるわけですから、世の中のブラック企業はもっと様々な手法を持ってすり抜けてくることでしょう。

働き方改革。企業の取り組み方一つとっても、ホワイト企業かブラック企業かの判断材料になるのではないでしょうか?

 

このコラムを通して、少しでも多くの方が、ご自身の置かれている状況の異常さに気づいて頂ければ幸いです。