当社のサービスの一つが「退職代行」です。
退職、というとネガティブな印象を受けるのは辞める人だけでなく辞められる会社側も当てはまります。
採用活動を頑張って入社してもらったのに・・・
育成に時間がかかったのに・・・
この人が抜けたら業務が回らなくなる・・・
などなど、人が辞めるということに対してはどうしてもネガティブなリアクションを見せるものです。
それだけならば、当たり前の反応だと思うものですが中には反応過剰と言えることもしばしば。
『あいつは裏切り者だ!』という思考に陥ってしまうことがあります。
果たして、退職は『裏切り』なのでしょうか?
契約という側面から捉えればドライなもの
非常にクールに捉えるなら、退職というのは雇用契約の破棄に過ぎません。
契約というのは、双方の合意の現われです。
一方がそれを破棄するというのは何も珍しいことではありません。
会社側にも制限されている面があるとはいえ、「解雇権」があります。
退職する自由を労働者側が有しているのは何ら不思議なことではありません。
契約という側面から捉えれば、退職と言えども非常にドライなものであると言えます。
簡単に割り切れないのが心情
もちろん、だからと言って簡単に「はいそうですか」と割り切ることができないのが心情というものです。
採用するにも教育するにも、定着させるにも皆色々な思いを持って働いているものです。
そういう心情的なものは組織を維持するにおいて大切なものだと思います。
何でもかんでもドライに割り切るとギスギスした職場にしかならないでしょうから。
しかし、退職する側にも当然色々な思いがあります。
その思いというのも大切なものではないかと思います。
退職する側にも、退職される会社側にも様々な言い分があったり思いがあるのが普通です。
まずはここを理解しておかなければいけないと思います。
なぜ『裏切り』となるのか
人間が置かれている状況というものは時々刻々と変わるものです。
例えば、引っ越さなければいけなくなって物理的に勤務継続が難しくなることがあります。
そういうケースでの退職ならばなかなか『裏切り』とまでは思わないでしょう。
では、なぜ『裏切り』となってしまうのでしょうか?
いくつか原因を考えてみたいと思います。
1.過剰なチーム意識
どのような会社であれ、どのような職種であれ「組織」である以上チームとしての活動が求められます。
こと日本においては、「チームへの貢献=献身さ」となっていることがよくあります。
チームの倫理は個人の倫理と別の部分にあり、自己主張はチームの和を乱すとされ敬遠される傾向が強い。
何よりもチームの和を乱さないことが求められ、献身さという名の一種の自己犠牲の元で成り立っている。
このような環境下においては、「辞める」という自己主張でさえ「チームに迷惑をかける行為」とみなされます。
退職はチームの和を乱す行為と認定され、退職者は『裏切り者』というレッテルを貼られることになります。
2.レッテルを貼ることで退職を抑止しようとする
『裏切り者』というレッテルを貼ることは、実は退職した本人以上にチームに残っている人に影響を及ぼします。
(会社が思う)正当な理由以外での退職は全て、チームからすれば『裏切り者』と認定することで次の退職者を抑止しようとする側面が見受けられます。
このようなチームであれば、『裏切り者』に対しては徹底的に拒絶反応を示します。
退職するまでの期間はおろか、退職後も冷遇する。辞めた人のことを長年悪口のネタにしているような会社は結構見受けられるものです。
これは、「私たちが正しくて退職した人が悪い」ということを自らに言い聞かせると共に次に退職しようとする人に対して「辞めたらこういう扱いになるぞ」ということを暗に伝えています。
恐らく組織としての無意識的な自己防衛反応のようなものでしょうが、はっきり言えば無意味な行為です。
3.コミュニケーション不足
そもそも職場内でのコミュニケーションが不足している場合、『裏切り』に対しての反応が過多になるような傾向が強いように思います。
相手のことを深く知りもしない、知ろうともしないにも関わらず「退職」という裏切り行為に対してのみ反応してしまう。
こういう場合、特定の仲が良い人と「悪口」という共通の話題で盛り上がりたいがために裏切り者を必要としているという側面もあります。
いつまでたっても何年も前に辞めた人の悪口で盛り上がっている人たちがいるのは、それ以外に共通の話題がないということでもあります。
逆に、コミュニケーションが過剰な場合も『裏切り』に対しての反応が過剰になります。
これは「せっかく目をつけて可愛がっていたのに!!」という気持ちの裏返しでしょう。
職場の仲間に対してのコミュニケーションと個人的なコミュニケーションの境目が曖昧になっているようではどのみち上手くはいかないでしょうが・・・
4.過重労働で大変な場合
そもそも業務量が多い場合は退職者を裏切り者としてしまう傾向がかなり高まります。
「俺たちはこんなに忙しいのに!!」「自分だけ逃げようとは許せない!!」というパターンです。
ただでさえ忙しいのに、退職者の業務分まで負担しなければならないとなると、嫌味の一つくらい言いたくなるのは理解できます。
しかし、業務が忙しいのは退職した本人の責任でも何でもありません。
業務負荷を低減させるための働きかけがどれくらいできていたか。マネジメントの問題であることがほとんどです。
上に文句を言うことはできないため、仕方なく辞めた人を悪者にして留飲を下げているだけの話。
嫌なら自分も辞めればいいのでしょうが、それもできないで板挟みになっている訳です。
『裏切り』を非難する前に
結局のところ、退職者を裏切り者とみなしてしまうような場合、多かれ少なかれブラック企業的な環境になっている可能性が高いでしょう。
はっきり言えば、別に退職するのに会社が納得できるような理由を提示する必要はありません。
退職者を『裏切り者』と認定して組織としての体裁をなんとか整えようとしている自己防衛手段が働いているだけの話です。
これから退職する人に伝えたいのは「辞めた後に何を言われようとも気にしないでいい」ということです。
多かれ少なかれ文句を言う人はいます。
しかし、そういう人に限って職場の現状をよくしようとするでもなく、退職する訳でもありません。
『裏切り者』を見つけて非難することで留飲を下げるよりも、自社のどこが問題点だったのかを把握して改善することの方が重要です。
この姿勢については「平社員」だとか「役職者」だとかは関係ありません。
それすらできないのであれば、他人に文句を言う資格もないのです。
苦しい状況に置かれていると辞める人のことを羨んでしまいます。
その気持ちの現われが『裏切り』認定なのでしょう。
自社の居心地がよければ、辞めていく人に対しての羨ましさは湧いてきません。
むしろ、快く「次でも頑張れよ!」という気持ちで送り出せるでしょう。
退職する人を逃げているように感じるかも知れませんが、果たして現実から逃げているのはどちらでしょうか?
何度でも言いますが、これから退職する人は今の職場の人から何を言われるかなんて気にしてはいけません。
職業選択の自由は憲法が認めている権利です。
堂々としていればいいのです。
それでも、もし気になるのであれば私たちがお力になれることもあるかと思います。
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